全体的に、例年通り中学受験最高峰の難度といえる。算数が易しかったことをふまえれば、国語の比重は例年よりも大きかっただろう。桜蔭を目指すのなら、新小6に上がった段階で入試を使った演習をするくらいのつもりで臨まれたい。
(1)と(2)については平易な問題である。確実に得点してきたい。
(3)はなかなかの曲者。単純な穴埋めに見えて、実は本文全体を把握する必要がある。解法のポイントは、引用されている「文章」の中から、筆者の思い出話と共通する箇所を拾いつつ、それらが「一心不乱に励行した」という理由づけになるものを2つ挙げること。 だがしかし、それでもいくつかの答えが想定できる。こういった場合はどれが絶対的な正解なのかを受験生が導き出すのは難しい。最終的には原典を紐解くしかないのだから、上記のロジカルな部分を踏まえつつ、自信をもって答えを書いて次の問題に進まれたい。
(4)は解答欄のきわめて大きな難問。傍線部5の「健全」という言葉を筆者がどういう意味で使っているのか……それをきちんと汲み取っていく必要がある。つまりこの問題で求められているのは、中学受験の国語の基本である「他者共感」の力である。 しかしそれは、ただ思うがままに「健全」という言葉の意味を推量したり、あるいは無思慮に筆者の意見に賛同したりすることではない。筆者が傍線部4の行為を「健全」と評している理由や根拠を、本文の中から拾い上げることで、はじめて「筆者に共感した」と言えるのである。
この手の大きな記述問題を解くうえで大切なのは、「満点を取る」ことではなく「できるだけ得点をする」ということ。本問の場合、筆者はこの「健全」という言葉をどういう意味で使っているのかという説明と、その根拠となるエピソードを指摘することが肝となる。そこさえ押さえれば、「この問題ができなかったがゆえに不合格」ということにはならないはずだ。
(1)の穴埋めは平易。
(2)も苦戦することはないだろう。
(3)は「くわしく説明しなさい」という問題で、解答欄のサイズもそれなりに大きい。「なぜ見たことないものを不気味と感じるのか」を説明するだけでなく、主人公の心理にも言及していく必要がある。
(4)答案に盛り込む要素は「傍線アの時点でのぼく」、「傍線イの時点でのぼく」、「前2つがどのように違うか」、「その違いを生じさせた経験は何か」である。大問1の重たさや、記述答案をまとめる時間も加味すると、この本文を何度も読み返す余裕はない。また、算数が易化したことをあわせて考えれば、国語でいかに得点できるかが合否の分かれ目となったことだろう。
桜蔭受験生に求められるのは「記述答案を素早く・過不足なくまとめる力」だけでなく、「最初に読むときに大まかな要素をきちんと掴める読解力」という、受験国語の本質であることに留意されたい。
(5)は、この物語が一人称視点で書かれていることに注目。地の文で「それ専用の言葉があるんだろうけど、ぼくはまだ知らない」とある以上、言い換えられる言葉は「知らない」と言っている時点よりも後に、主人公以外の人物の口から出てくることとなる。