例年通り大問2つ。女子校の中で随一の記述量、そして出題されるテーマの重さは今年も同様だ。
本文はやや柔らかい文体で読みやすいが、受験生によく考えさせる角度からの出題をしている良問。
3つの記述が課されているが、いずれも本文中のものを抜き出したり言い換えたりするだけでなく、受験生自身の引き出しから書くことが要求されている。
とくに注目なのが問3。「具体的な例をあげて説明しなさい」という問いで、本文中に具体例もあげられているが、これに触れるだけでは明らかに埋めきることができないスペースの解答欄が用意されている。
この問題のヒントとなるのが、12行目の「農林水産業にしても、工業の各分野にしても、都市計画にしても、消費の全般的体制にしても」という箇所。本文中に挙げられた4つの分野に関する具体例をあげたうえで説明することで、はじめて解答欄のスペースに見合うだけの記述ができる。
具体例を挙げるには、社会や時事に関する知識が必要となる。だが、社会の知識をただ1問1答式に丸暗記するような学習しかしていない場合は、「七世代後のことも考えているかどうか疑問符がつくような、農林水産業が抱える問題の具体例」を自分の知識の中から引き出すのは困難である。
月次のテストで得点することのみに終始する受験指導者ではなく、トップレベルの学校がどういった出題をするのかをよく知っている受験指導者の授業を受けることは、入試当日に大きなアドバンテージとなるだろう。
余談だが、時事を軸とした出題は理科でも珍しくない。今年の桜蔭中の理科では2011年の節電を軸とした出題がなされているほか、昨年の開成中の理科でも、小惑星探査機はやぶさの帰還に関する出題が見られた。
漢字は完答できなければ厳しいレベル。毎日の計算・漢字トレーニングを当たり前のものとしてこなす習慣が望ましい。
飛べない鳥が飛べるようになるまでの物語のなかで、不安や寂しさ、肥大化したプライド等の葛藤の変遷をていねいに読み取らせる難問。
空欄補充1問と記述3問という構成になっており、記述は各シーンにおける主人公の気持ちを説明させるもの。
それぞれ流れに沿って記述していけば、まったく的外れな答案にはならないだろう。だが限られた試験時間の中で、二転三転する主人公の気持ちをどこまで追えるかが勝負となる。
特に問4は200文字以内という字数制限に収めなければならない。あまり書いたり消したりを繰り返している時間はないだろう。記述することそのものに時間を取られるタイプの受験生は、それだけ丁寧に本文を読み込み、主人公の心情を追うことが難しくなってしまう。
ここで大きく得点を伸ばせるかどうかは、合否そのものに影響してくるだろう。そのために絶対的に必要なものは「記述慣れ」である。実際に記述問題を解いてみて、添削指導を受ければ、必要な要素を読み取る能力・それを答案にまとめる能力、どちらも確実に伸ばしていけるのだ。
国語は他の3教科とは違い、明確な試験範囲がない。そのため、やろうと思えば4年生や5年生のうちから過去問に取り組むことも可能。「過去問は6年の夏から」といった固定観念に縛られることなく、ハイレベルな記述指導を早い段階から受けることが、記述を重視する学校に合格するための近道といえるだろう。